株式会社アイリス ボタン製造世界シェアトップ。シャネルやバーバリーなど名だたる海外ブランドも使用 株式会社アイリス 代表取締役 大隅 洋　 (2016年4月取材)

未曾有の危機を 乗り越えて

大隅

三代目ですので、よく言われるのは、一代目が起こした会社を二代目が守り、三代目が潰すと言われますんで、潰さないことは念頭に。なかなかそんなに自分の思うようにというのはできないと思います。
まあ私は楽観的なので、始めのうちは運だと思います。運と申し上げましたのは、あのこのボタンという仕事を子供の時に父から説明を受けるときに、ボタンというのは化粧品と同じぐらい、儲かるんだよと。理由はですね、ボタンというのは家内工業なんですね、世界中で、具体的にどういうことかと言うと。

例えば、１００年以上前から日本で作られている貝ボタンであれば、まず穴をあけて、丸いタブレットを作る。それを平らにする。磨く。形を削る。穴を空ける。今いくつか申し上げましたけど、すべての工程ごとに他人の所に移って行くんです。そのたびに、利益が乗りますから、当社のように素材から製品まで一貫生産している所は、多種多様な加工屋さんがやっていた工程の利益を全部丸取りしているわけなんで、利幅が非常に高かったと。

そういう利幅が高い中で、販売店さんのお客様と協力しながら、時代の単価要請に対応ができたんですね。しばらくは。ただやはりバブルの崩壊以降、リーマンショックと非常に厳しい波がまたやってきましたので、このリーマンショックだけは、ちょっと状況が違いまして、毎年高まる海外縫製、海外縫製するなかで、現地調達、現地物流、いわゆる日本から送りつけていた付属品を全部縫製する現場で調達して完成品にしてしまおうという究極のニーズ。

それが少しづつ高まって来ている。それを何とかシェアアップで、占有率アップで補えば、なんとか売り上げ、利益は維持できるかなという政策方針で進めていたわけですが、リーマンショックだけは、別で、これはもう百貨店さん当社の場合には高級品質のボタンが主流でしたので、百貨店さんで売られている服に着くボタンがメインターゲットだったんですね。

百貨店さんが単価をやはり半値七掛けにしたいと、当然七掛けの商材にする時にボタンも３０％引いてくれますかって言って頂ければ、出来た物もあるんですが、言えませんよね。もしできたら、今までどんだけ儲けていたんですかとなってしまうので、言わないですよね。

したがって、アパレルメーカーさんが一斉にされたのは、中国に渡って、中国で調達できる資材をかき集めました。当社も中国に支店はあるんですが、お客さまのいらっしゃるんですが、例えばお客様が中国へ出張されたアパレルさんにボタンを紹介する時に、アパレルさんはこれ日本人が作ったボタンだよねと、こんないいボタンじゃなくて、もっとひどいボタンでいんだよと。もう見た瞬間に値段も聞かずにいらないと、もっと安いボタンを見せてくださいと、そういう状況がリーマンショック以降、一気に進みましたんで、改めてはやはり売り上げが下がるという状況になりました。

ここはこれまでのようなのんきなことではやっていけませんでしたので、社員一斉に協力をして頂いて、元々当社の社風というか、ほとんどやはり会社を辞める方が少ないんですよ。ずっと当社にいて頂く社員が多くて、５００名を超える社員がいるわけですが、５００名が一丸となって、自信を持って動くと。

まあそういった写真がみんなで我慢を共有しようと、実際に先代の時には、バブルの崩壊で、売り上げが下がった時に一度リストラはしているんですが、私は同じように売り上げは下がっていますが、リストラだけは絶対にしないということで、社員に協力をして頂いて、賞与をぎりぎりの所でやって頂くとか、一部給与カットというところもしながら、いわゆるワークシェアという形を取って、なんとか乗り越えているという状況です。