Vol.2 価値観
インタビュー内容
価値観(祖父の影響)
貞松
私自信では3代目だと思っているんです。祖父は当時うちの父が眼鏡屋を始めた頃だと思うのですが、むしゃくしゃしていたんでしょうね。彼は腕が良かったらしいんです。
クラフトマンというか職人というか、職人を絵に描いたような人だったので、孫に時計の分解掃除を教えるわけです。俺は腕がいいんだと。いまだにできますよ、時計の分解掃除。プラモデルを組み立てるようなものです。祖父が言っていた事は小さい商店だったので、お前は将来何をやってもいいけど、なくならないことをやれと言われたんです。その次に言われた言葉が決定的だったのですが、「いらないものはなくなるんだ」と。彼は人生を懸けて腕を磨いたんです。ところが時計がクォーツ化されただけで仕事がなくなったんです。お前はどんな仕事でもいいから世の中から必要とされる仕事をやれ、いらないものはなくなるんだと。うちの祖父の教えというのはトラウマになっています。それで宝石店を始めて、うまくいったんです。実は最初からうまくいったんです。
貞松
しかし事業が大きくなればなるだけ社員や借金が増え、いろんな経営資産も増え、責任も重くなりました。
IPOを目指してやっていく中で、いろんな証券会社や監査法人が絡んできて、どんどん不安になっていきました。それは何かというと、これっているのかと思いました。宝石屋が言うのもなんですが、宝石に1億円払うのか、不動産に1億円払うのか、私だったら間違いなく不動産に1億円払うなと、宝石屋が言うのだから間違いないです。そう思ったんです当時。その時に本当に不安になりました。これはいけるのか。
貞松
ガビ・トルコフスキーさんというユダヤ系のベルギー人がいまして、この方はガビと我々は呼んでいますが、この業界ではすごく有名な方です。マイスターで人間国宝のような感じのおじいさんなのですが、たまたまこの方と知り合いになり、ガビに聞きました。「なぜ人はジュエリーを買うんだ」と、笑われました。「お前ジュエラーだろ、ジュエラーがそんなこと聞くのか」と。笑いながら教えられたのが、「ダイヤモンドはどのくらい前にできているか知っているか」、「分からない」、「だいたい30億年前だ」、「人間って生まれてどのくらいか知っているか」、それは知っていました。「20万年ぐらいだろ」と。「そう20万年ぐらい。30億年後には人間はいないよ」、「でもこのダイヤモンドはこのままあるよ」と。「こういう事を永遠だというんだ」
貞松
宝石がなぜ人に必要とされるかというと、人間の命が永遠ではないから。この世に唯一永遠なものに想いを託して、家だってそのうち、くずれてなくなる。写真だって黄色くなって見えなくなる。土地だって分からない。ヨーロッパですから、いつも戦争しているので、「永遠なのはこれしかないんだ」と、人間が永遠ではないから、この世に唯一永遠のものに想いを託して、自分の大切な人に伝えていく。これをヨーロッパで「bijou(ビジュ) de(ド) famille(ファミーユ)」というんだと。
貞松
これは家族の宝石という意味なんですが、bijouは宝石、familleは家族。おばあちゃんからお母さんにお母さんから娘に、あるいは新しく来る花嫁に。その家の想いをバトンタッチをしていくことを、bijou de familleというんです。
その習慣があったから宝石はずっと必要とされた。「宝石以外にbijou de familleは何ができるんだ」と。なるほどと思いました。永遠だから役に立つんだ。そこから迷いが消えました。今、うちの経営理念が「ジュエリーに愛と夢を込めて bijou de famille」となっているのはそういうことなんです。私はbijou de familleという習慣が世の中にもっと広がっていけば、この世の中もっとよくなると思っています。
お母さんが20歳の時に買った、小さなダイヤモンドかもしれない安いダイヤモンドかもしれませんが、そのダイヤのネックレスをもらってうれしくない娘はいませんよ。1人じゃないんだ、つながっているんだ。ずっとつながっていくんだ。そういう感覚を人間は持てたから社会が作れた、家族が作れた。創いう事がすごく希薄になっていると思うんです。
そういう意味でいうと、私たちがbijou de familleというものを伝えていく事が使命だと思っているし、それが本当に世の中をよくすると思っているので、それがはっきり言って降りてきたと思う。この会社に2段目のロケットが入ったと思います。そのままマーケティング分析だけでいっていたら、今頃大変なことになっていたと思います。
貞松
だから、必ず私たちは、エンゲージメントリングを初代として買いにこられるお客様に必ず伝えるのは、マリッジチングはお墓の中に持って行って下さいね2人の指輪です。
2人だけの指輪ですと。でもエンゲージメントリングはあなたたちの指輪であり、そうではない。お家の指輪です。いつかお2人の間に生まれてくるお子さんに伝えるつもりで選んで下さい。あなたたちがこれから、人生の中で頑張っていることや楽しいかったこと、そういうことを全部込めて子供に贈って下さいね。これがエンゲージメントということですよって、これがジュエリーができることなんです。
貞松
他の何も出来ない。これができるからジュエリービジネスは3千年続いてきたんです。この世で一番古いビジネスです。
なぜ途切れなかったのか、うちの祖父的にいうと、いらないものはなくなるわけですから、必要だったんです。なぜ必要だったのか。やはりここがこれから、ジュエリー業界にとって一番大事なことになっていくのではないかと思います。私は創業者ですねとよく言われるのですが、私がそこに行き着いたのは3代目だからです。完全に自分が創業者だとマーケティングだけで行ったのではないかと、そんな気がします。
経営者プロフィール
| 氏名 | 貞松 隆弥 |
|---|---|
| 役職 | 代表取締役社長執行役員 |
| 生年月日 | 1961年12月22日 |
| 出身校 | 成城大学 |
| 座右の銘 | 夢を持つのは能力だ! 散歩のついでに、気がついたら富士山に登っていた人はいません。まず「富士山に登ろう!」登りたい!」と思うこと。 「夢を持てない時代」で「夢を持つこと」はひとつの能力だと思います。 |
| 愛読書 | フィリップ・コトラー「マーケティング3.0」、P.F.ドラッカー「経営の条件」 |
会社概要
| 社名 | 株式会社サダマツ |
|---|---|
| 本社所在地 | 東京都目黒区中目黒2-6-20 |
| 設立 | 1974 |
| 業種分類 | 小売業 |
| 代表者名 | 貞松 隆弥 |
| 従業員数 | 461 名 |
| WEBサイト | http://www.sadamatsu.com/ |
| 事業概要 | 宝飾品(貴金属類、宝石類、アクセサリー)、眼鏡類、時計等の販売。 |